孤食と供食、食べる幸せ

エッセイ

私は『孤食』が好きだ。
定食屋でカウンター席に案内されると、心の中で思わずガッツポーズをする。

1人暮らしの部屋は、誰にもジャマされない無敵の空間。冷蔵庫にはずっと楽しみにしていたケーキがある。紅茶を淹れて誰の目も気にせず、思い切り口を開けてケーキを頬張る。最高じゃないか。
カウンター席もそうだが、誰の目も気にせず、食べる幸せを感じる瞬間が好きだ。

もちろん、『供食』も好きだ。
真っ先に思い浮かぶのは、家族と過ごした食事の時間。なぜか外食した時の記憶が大きく残っている。私にとって外食は特別なイベント。共働きだった両親が仕事から帰ってきて、「今日は外へ食べに行こう」と告げてくると、すごく喜んだ。

ジブリ作品『平成狸合戦ぽんぽこ』には、狸たちがハンバーガーを食べるシーンがある。家族とマクドナルドへ行った時、幼い私は、狸たちを真似して大好きなチーズバーガーを頬張った。
その時に食べたアップルパイにはカスタードクリームが入っており、当時公開中だった映画『トイ・ストーリー2』のパッケージだったことも鮮明に覚えている。

自分の誕生日に地元の洋食屋へ行き、大きなパフェでお祝いしてもらったことも良い思い出だ。お店の人に撮ってもらった私とパフェが写っているポラロイドが、実家の壁に貼られている。

母は仕事で忙しかったが、夕飯や学校のお弁当を欠かさず作ってくれた。
母が作ってくれた好きな料理は、砂糖の入った卵焼き、濃いめのドロドロしたカレー、フレンチトーストが挙げられる。

学校行事のお弁当として作ってくれた、ハローキティのアルミホイルに包まれ、水分でベタベタに張り付いた海苔で巻かれた昆布のおにぎり、パン耳が付いたタマゴサンドイッチも大好きだった。

4年前、都内で有名なお店で数量限定のアメリカンチェリーパイを食べた。
宝石のように赤くて大きな粒がゴロゴロとパイ生地に乗り、フォークで運ぶと、口いっぱいにチェリーの甘酸っぱさが広がって、果汁で水分補給をしているような感覚だった。
東京には、ワクワクする飲食店がたくさんある。

私も東京で恋をした。生まれも育ちも違う10歳以上年の離れた人と。仕事終わりや休日にデートをし、渋谷駅前や新宿の京王百貨店前で待ち合わせるのがお決まりだった。

サンマルクでお茶をした時、チョコクロを食べた私は、「美味しいね!」と感想を口にした。
彼は優しい目で私を見つめていた。

サイゼリヤで食事をした時、クリスマスイブに有休が取れたので、映画デートをすることを提案してくれた。「未来に早く言いたかった」と口にする彼。2人でミラノ風ドリアを食べながら、赤ワインを飲んだ記憶が残っている。
大好きだった彼とも、物理的にも距離が離れてしまった。

どんなに状況が変わっても、過去の愛おしい食の記憶は、ずっと大切な宝物だ。

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